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【▲太陽系外惑星「GJ 367b」(左)を描いた想像図(Credit: SPP 1992 (Patricia Klein))】
ドイツ航空宇宙センター(DLR)惑星研究所のKristine Lamさんを筆頭とする研究グループは、地球からおよそ31光年離れた恒星を公転する太陽系外惑星「GJ 367b」が見つかったとする研究成果を発表しました。研究グループによると、この系外惑星は公転周期が8時間弱と短く、サイズが直径の8割以上もある鉄やニッケルでできた大きなコア(核)を持つ可能性があるようです。
■公転周期は約8時間、内部に大きな鉄のコアがある可能性
今回発見が報告された系外惑星GJ 367bは、南天の「ほ座」(帆座)の方向およそ31光年先にある恒星「GJ 367」を公転しています。GJ 367bの直径は地球の約0.72倍(約9000km)、質量は地球の約0.55倍と推定されています。発表によれば、GJ 367bはこの四半世紀で4500個以上が見つかっている系外惑星のなかでも最軽量級の惑星とされています。
研究グループによると、GJ 367bの公転周期(言い換えれば「1年」)は7.7時間と短く、地球の1日と比べても3分の1程度しかありません。このように公転周期が地球の1日よりも短い系外惑星は「超短周期(UPS:ultra-short period)惑星」と呼ばれています。Lamさんによると、超短周期惑星はGJ 367b以外にも幾つか見つかっていますが、その起源はまだわかっていないといいます。
公転周期が短いということは、それだけ主星に近い軌道を公転していることを意味します。GJ 367bの主星であるGJ 367は恒星のなかでも小さくて軽く、表面温度も低い赤色矮星(※)ですが、そのすぐ近くを公転しているGJ 367bの表面温度は岩石だけでなく金属も溶ける摂氏1500度に達する可能性があるようです。
※…GJ 367の表面温度は摂氏およそ3200度、太陽と比べて直径は約半分・質量は約4割とされる
直径と質量の推定値から算出された平均密度をもとに研究グループがGJ 367bの内部組成を分析したところ、直径の約86パーセントという大きなサイズを持つ鉄やニッケルでできたコアが存在する可能性が示されました。太陽系の惑星では水星が直径の約8割ほどもあるコアを持つとされており、研究グループはGJ 367bと水星の類似性を指摘しています。
また発表によると、赤色矮星では複数の系外惑星が発見されることもめずらしくないことから、GJ 367でも別の惑星が見つかる可能性があるといいます。研究に参加したマサチューセッツ工科大学(MIT)のGeorge Rickerさんによると、仮にGJ 367のハビタブルゾーンに系外惑星が存在する場合、その公転周期は地球の約1か月と予想されています。
GJ 367bはアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」(Transiting Exoplanet Survey Satellite)の観測データから発見されました。研究グループはチリのラ・シヤ天文台にあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の3.6m望遠鏡に設置されている高精度視線速度系外惑星探査装置「HARPS」(High Accuracy Radial Velocity Planet Searcher)を使って追加観測を行い、これらの観測データをもとにGJ 367bの公転周期、直径、質量などを導き出しました。TESSは「トランジット法」、HARPSは「視線速度法」という手法を利用し、主星の観測を通して系外惑星を間接的に検出することができます(トランジット法と視線速度法については後述)。
主星のGJ 367は太陽系に比較的近くて明るく見えるため、今回発見されたGJ 367bの特性を突き止めることができたことに加えて、新たな惑星を発見できる可能性も十分あるとされています。Rickerさんは「『別の惑星を探して!』という看板があるようなものです」と表現しています。研究グループは、GJ 367bのさらなる観測や新たな系外惑星の捜索が、超短周期惑星の起源も含めた系外惑星に関する知識の向上につながると期待しています。
■系外惑星の観測に用いられるトランジット法&視線速度法
トランジット法は、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに系外惑星を間接的に検出する手法です。TESSはこの手法を用いて系外惑星の探査を行っています。
NASAが公開している太陽系外惑星アーカイブによると、TESSの観測データから発見・確認された系外惑星の数は172個で(2021年11月18日時点)、さらに4704個の系外惑星候補が確認されるのを待っている状況です(2021年11月19日時点)。
▲系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画▲
(Credit: ESO/L. Calçada)
いっぽう、視線速度法は系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。HARPSはこの手法を用いて系外惑星の探査を行うことができます。
主星が揺れ動くと、その光の色は地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽく変化します。HARPSはその様子を主星のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)の周期的な変化として捉えるために、天体のスペクトルを調べる分光観測を行っています。
▲系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画▲
(Credit: ESO/L. Calçada)
関連:「1年」がわずか16時間、観測史上2番目に熱い太陽系外惑星が見つかる
Image Credit: SPP 1992 (Patricia Klein)
Source: ドイツ航空宇宙センター / マサチューセッツ工科大学
文/松村武宏
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